40代半ば、資格を捨てるのではなく、人生の選択肢を増やすために住宅を学ぶ|人生を組み替える|仕事編①

人生を組み替える

「人生を組み替える」シリーズ | #01  40代半ば、住宅を学ぶ

「どうして、今さら住宅なんですか?」

最近、そんな質問をされることが増えた。

たしかに、そう思われるのも無理はない。

私はこれまで、人の健康や生活を支える仕事に長く携わってきた。専門的な資格も持っているし、これまでの経験を活かして、これからも同じ分野で働くことはできる。

それなのに今、私は住宅設計や住環境について学ぶための職業訓練に申し込んでいる。

自分でも、ときどき思う。

「なぜ私は、こんな方向転換をしようとしているんだろう」と。


「今の仕事を続ければいいのに」

職業訓練の相談をしていたときにも、似たようなことを言われた。

「今までの資格を活かせる仕事もありますよね」

「夜勤が大変なら、昼間だけ働く仕事もありますよ」

言っていることは、もちろん分かる。

これまでの経験を活かせば、仕事を見つけること自体は、きっと住宅業界より簡単だろう。

それでも、私は「では、今までと同じ仕事に戻ります」とは思えなかった。

そこで初めて、自分自身に問い直すことになった。

私は、本当に今までと同じ仕事を続けたいのだろうか。


住宅への興味は、突然生まれたわけではない

実は、住宅や暮らしへの興味は、最近突然出てきたものではない。

以前、海外で長期間生活した経験がある。

そこで、日本とは異なる文化や生活様式に触れた。

家のつくり。

人と人との距離感。

家族との過ごし方。

生活空間の使い方。

同じ「家」でも、文化が違えば、こんなにも暮らし方が変わるのかと思った。

その経験は、そのときには人生を変えるほどの出来事ではなかったのかもしれない。

でも、長い時間が経って振り返ると、自分の中にずっと残っていたのだと思う。

私はもともと、「人がどう暮らすのか」ということに興味があったのかもしれない。


人を支える仕事をしてきたからこそ、「住まい」が気になった

これまで人の健康や生活に関わる仕事をしてきて、感じることがあった。

人の健康は、病院や薬だけで決まるものではない。

毎日の生活。

家族との関係。

仕事。

睡眠。

食事。

そして、どんな環境で暮らしているのか。

そうしたものが全部つながっている。

どれだけ医療が充実していても、その人が毎日過ごす場所が安心できなければ、生活そのものを支えることは難しい。

そんなことを考える機会が、仕事をする中で何度もあった。

だからなのかもしれない。

私はいつの間にか、「人を支える」ということを、医療や健康という側面だけではなく、住まいという側面からも考えてみたいと思うようになった。


大きな転機になったのは、仕事を辞めたこと

それでも、長い間ずっと「住宅を勉強しよう」と考えていたわけではない。

大きな転機になったのは、仕事を辞めたことだった。

そして、これまで暮らしていた場所を離れ、新しい土地で生活を始めた。

仕事をしているときは、目の前の仕事をこなすことで精一杯だった。

毎日働いて、休みの日には休む。

その繰り返しの中では、「この先どうしたいのか」なんて、じっくり考える時間はなかなか取れない。

でも、仕事を辞めると時間ができる。

時間ができると、考える。

そして考えれば考えるほど、

「私はこの先、何をして生きていきたいんだろう」

という問いから逃げられなくなった。


40代半ばで、もう一度「学ぶ側」に戻る

そこで出てきたのが、住宅だった。

住宅の間取り。

設計。

リフォーム。

住宅設備。

配管。

住環境。

まだ知らないことばかりだ。

だからこそ、まず基礎から学んでみたいと思った。

もちろん、住宅設計の専門家になりたいという気持ちがまったくないわけではない。

でも、それだけが目的ではない。

むしろ私が欲しいのは、**「住まいについて自分で考え、判断できる知識」**なのだと思う。


本当は「就職したい」のではないのかもしれない

ここは、少し難しいところだ。

職業訓練を受ける以上、修了後には就職することが前提になる。

実際、訓練後にどんな仕事に就くのかも考えている。

住宅設計。

リフォーム。

住宅設備。

工務店。

設計補助。

CAD。

いろいろな仕事がある。

求人を見ていると、リフォームの相談を受け、現場を調査し、プランを作り、見積もりを出し、工事につなげていくような仕事もある。

「こういう仕事なら、住宅について幅広く学べそうだな」と思う。

一方で、求人を見れば見るほど、現実も見えてくる。

未経験から入れる仕事はある。

けれど、これまで専門職として働いてきた自分からすると、給与条件に驚くこともある。

「この条件で、これから働くのか」

と思ってしまうことも正直にある。

だからこそ、私は「住宅業界に転職すること」だけを最終目的にしているわけではないのだと思う。


私が増やしたいのは、仕事ではなく「選択肢」

たぶん、私が本当に欲しいものは、もう少し別のところにある。

住宅について知識があれば、自分の暮らしにも使える。

中古住宅を見たときに、どこを直せばいいのか考えられる。

リフォームの見積もりを見たときに、内容を判断できる。

空き家を見たときに、「この建物をどう活かせるだろう」と考えられる。

誰かの住まいについて相談されたときにも、以前より具体的な提案ができるかもしれない。

そして、いつか自分自身で住まいに関わる何かを始めることもできるかもしれない。

まだ具体的な形は決まっていない。

でも、**「自分でできることを増やしておきたい」**という気持ちは、はっきりしている。


資格を捨てるわけではない

「せっかく資格があるのに」

そう言われると、少し考えてしまう。

でも、新しい分野を学ぶことは、これまでの資格を捨てることではない。

これまでの経験は消えない。

人を支える仕事をしてきた経験も、海外で異なる文化や暮らしに触れた経験も、これまで生きてきた中で身につけたものも、全部これからの自分の中に残っていく。

そこに、住宅という新しい知識を加える。

そう考えればいいのだと思う。

一つの道を捨てて、別の道へ行くのではない。

これまで歩いてきた道に、もう一本、新しい道を増やす。


40代半ばから人生を「設計」し直す

考えてみれば、少し面白い。

私はこれから住宅設計を学ぼうとしている。

でも、その前に自分自身の人生を設計し直している。

どこで暮らすのか。

どう働くのか。

どんな知識を持っていたいのか。

何を自分でできるようになりたいのか。

会社に雇われて働くことだけが、働き方のすべてではない。

かといって、いきなり独立できるほど簡単な話でもない。

だから、まず学ぶ。

そして、小さく経験する。

その中で、自分にできることを増やしていく。

それが今の私にとって、一番現実的な道なのだと思う。


まだ、答えは出ていない

正直に言えば、これからどうなるのかは分からない。

職業訓練に合格するかどうかも、その先にどんな仕事をするのかも、まだ決まっていない。

住宅を学んだ結果、思っていたものと違うと感じる可能性だってある。

別のことを始めるかもしれない。

それでもいいと思っている。

40代になったからこそ、最初から正解を決めてしまうのではなく、やってみながら次を考えるという生き方があってもいい。

これまでの人生で得てきたものを土台にして、新しいものを一つずつ積み上げていく。

その先に何ができるのかは、まだ分からない。

でも少なくとも、今までよりも人生の選択肢は増えるはずだ。

だから私は、住宅を学んでみようと思う。

資格を捨てるためではなく、これからの人生で、自分が選べる道を増やすために。


住宅を学ぶことを決めた。

けれど、そこでふと別の疑問が浮かんだ。

そもそも私は、これから何のために働きたいのだろう。

仕事を辞めて、自由な時間ができた。
旅行にも行った。
新しい土地にも引っ越した。

それなのに、自由になったはずの時間の中で、私は少しずつ「お金」や「孤独」や「これからの働き方」を考えるようになっていた。

「働かなくても生きられる」と「働かない」は、どうやら同じではないらしい。

次回は、仕事を辞めてからの数か月を振り返りながら、私自身が改めて考えることになった「働く」ということについて書いてみたい。

次回:「働かなくても生きられる」と「働かない」は、同じではなかった


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仕事、暮らし、学び方――40代、これからの人生を自分で選び直していく。


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