最初からFIREを目指していたわけではない|人生を組み替える|仕事編⑥

人生を組み替える

「人生を組み替える」シリーズ|#06|40代、自由な時間をどう使うのか


前の記事で、「普通」というものについて考えた。

環境が変わると、それまで普通だと思っていた収入や暮らし、家族のあり方まで、違って見えることがある。

そして、自分の人生をあらためて眺めてみると、もう一つ、これまであまり意識していなかったことに気づく。

私は45歳で会社を辞めた。

その背景には、これまで少しずつ積み上げてきたお金がある。

ただ、私は最初からFIREを目指していたわけではない。

「40代で会社を辞めよう」と計画していたわけでもない。

振り返ってみると、もっと単純な理由だった。

会社を辞めたいと思ったときに、お金がなくて辞められない自分にはなりたくなかった。

「会社を辞めても困らない自分」をつくりたかった

私は22歳から働き始めた。

これまでの平均的な年収は、ざっくり500万円前後。

年収1,000万円のような高収入だったわけではない。

それでも、働いて得たお金をすべて使う生活はしてこなかった。

生活に必要なお金を使い、旅行にも行く。

そのうえで、残ったお金を貯める。

ある程度まとまったら、投資に回す。

特別なことをしていたわけではない。

ただ、ずっとそれを続けてきた。

そんな私がお金を貯めるようになった理由は、「老後のため」だけではなかった。

仕事をしていると、

「この会社では長く働けないかもしれない」

と思うことがある。

実際、私は何度か転職している。

転職すれば環境が変わる。

でも、どこへ行っても「ここならずっと働ける」と思えるとは限らない。

そういう経験を重ねるうちに、少しずつ考え方が変わった。

「会社に依存しないためには、お金が必要だ」

と思うようになった。

会社を辞めることそのものが目的だったわけではない。

ただ、

「辞めたいのに、お金がないから辞められない」

という状態だけは避けたかった。

だから、お金を貯めた。

30代から、少しずつ資産を積み上げてきた

30代に入った頃は、まだ大きな資産があったわけではない。

30代後半になって、少しずつまとまった金額になってきた。

そして40代に入る頃には、それまでよりも資産の増え方を意識するようになった。

NISAやiDeCoも利用するようになった。

ただし、当時から「FIRE」という言葉を意識していたわけではない。

将来いくらあれば会社を辞められるのか。

何歳でリタイアするのか。

そういう明確な計画があったわけではない。

むしろ、

「少しでもお金が増えて、将来の選択肢が増えればいい」

くらいの感覚だったと思う。

30代の頃には、貯めてきたお金を見ながら、

「ここまで貯めても、何に使うんだろう」

と思ったこともあった。

旅行に行ったり、欲しいものを買ったり、もっとお金を使ってもいいのではないかと思う時期もあった。

それでも、完全に使い切ってしまうことはなかった。

手元にお金があること自体が、少し安心だったからだ。

資産が増えたのは、特別な方法ではなかった

私の資産形成を振り返ってみると、何か特別なことをしたわけではない。

ものすごく高い年収だったわけでもない。

投資で一発当てたわけでもない。

毎年大きな金額を投資できたわけでもない。

生活の中で使うお金をコントロールして、残ったお金を貯める。

投資できる余裕ができたら、長期で運用する。

それを何年も続けてきた。

そこに、市場環境による資産価格の上昇も重なった。

もちろん、投資なので資産が減る時期もあった。

それでも、長い時間をかけて積み上げてきたものは、少しずつ大きくなっていった。

振り返ると、

収入を得ること。
使いすぎないこと。
残ったお金を貯めること。
長い時間をかけて運用すること。

その繰り返しだった。

派手ではない。

でも、時間をかけると、それなりの形になっていった。

お金を貯める目的が「将来」から「自由」に変わった

私の中で一番大きく変わったのは、お金の意味だったと思う。

最初は、単純に「貯金」だった。

将来困らないように。

何かあったときのために。

老後のために。

そんな漠然とした目的だった。

でも、仕事とのミスマッチを何度か経験するうちに、それが少しずつ変わった。

お金は、自由を買うためのものでもある。

そう思うようになった。

嫌な仕事を辞める。

転職する。

少し休む。

別の場所へ引っ越す。

新しいことを勉強する。

そういう選択をするとき、お金がなければ選択肢はどうしても狭くなる。

反対に、ある程度のお金があれば、

「今すぐ次の仕事を決めなくてもいい」

という余白ができる。

それは、私にとってかなり大きかった。

だから私は、FIREという言葉を知らない頃から、結果的にはFIREに近い方向へ進んでいたのかもしれない。

ただ、私自身の感覚としては、

「働かない人生を手に入れたい」のではなく、「働くことを自分で選べる人生にしたい」

というほうが近かった。

45歳で、本当に会社を辞めた

そして今年、私は会社を辞めた。

45歳だった。

もちろん、辞めるときに不安がなかったわけではない。

これから何をするのか。

次にどんな仕事をするのか。

この先、どれくらい働くのか。

決まっていないことはたくさんある。

それでも辞めることができたのは、これまで積み上げてきたものがあったからだと思う。

もし貯金がほとんどなかったら、今のような辞め方はできなかっただろう。

辞めた翌月から、次の会社を探さなければならない。

生活費を確保するために、とにかく働かなければならない。

そんな状態では、今のように住む場所を変えて、新しい分野を学ぶという選択はしにくかったと思う。

だから、私にとって資産形成は「老後の準備」というだけではなかった。

45歳の今、自分の人生を組み替えるための土台になった。

資産があっても、人生の次の答えは出てこない

ただ、実際に会社を辞めてみて、意外だったこともある。

お金があれば、人生の悩みが全部なくなるわけではなかった。

むしろ、会社を辞めたことで、新しい問いが出てきた。

「これから何をしたいんだろう」

という問いだ。

会社員だった頃は、

働く。

給料をもらう。

休みの日に旅行する。

また働く。

という生活が続いていた。

仕事があることで、時間の使い方にはある程度の形があった。

ところが、会社を辞めると、その枠がなくなる。

時間はある。

お金も、すぐに困るわけではない。

でも、

「だから何をするの?」

という問いには、自分で答えなければならない。

これは、お金を貯めていた頃にはあまり考えていなかったことだった。

「会社を辞められるようになれば自由になれる」

そう思っていた。

実際、自由にはなった。

でも、自由になった後の時間まで、自動的に充実するわけではない。

そこは別の問題だった。

お金がくれたのは「答え」ではなく「選択肢」だった

だから今は、資産形成について少し違う見方をしている。

お金が人生の答えをくれるわけではない。

お金があれば幸せになる、という話でもない。

ただ、お金があることで、

「今すぐ答えを出さなくてもいい」

という時間を持てることがある。

私は今、住環境について学んでいる。

これまでとは違う分野を知り、新しい場所で暮らしてみて、これからの働き方を考えている。

この先、また会社員になるかもしれない。

別の働き方をするかもしれない。

小さな仕事をしながら暮らすかもしれない。

まだわからない。

でも、今すぐ一つに決めなくてもいい。

それが、これまでお金を積み上げてきたことで得られた、一番大きなものなのかもしれない。

私は最初からFIREを目指していたわけではない。

「40代でリタイアする」という目標があったわけでもない。

ただ、

会社に依存しないために、お金を持っておきたかった。

それを何年も続けていたら、45歳で本当に会社を辞めることができた。

そして今、私はその先にいる。

お金を貯めることには、はっきりした目的があった。

でも、会社を辞めた今、その先の人生には、まだ決まった答えがない。

それでもいいと思っている。

人生を組み替えるというのは、最初から完成形を決めることではないのかもしれない。

これまで積み上げてきたものを一度並べて、

「私は何を持っているのか」

「何を持っていないのか」

そして、

「これから何を選びたいのか」

を、その都度考えていく。

45歳の私は、今ちょうどその途中にいる。


「1時間半もかけて訓練所に通うなんて、時間の無駄」——20代前半の女の子のこの言葉を聞いて、私は少し考えました。45歳になった今、私にとって“時間を無駄にしない”とは、どういうことなんだろう。


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仕事、暮らし、学び方――40代、これからの人生を自分で選び直していく。


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