「20年を一緒に生きようと思えた、小さな茶トラ」|移住という選択⑭

移住の選択と思考

移住の選択と思考シリーズ 第14回

地方都市へ移住して、約1か月。

仕事を辞め、住む場所を変え、これからの人生をどうしていくのかも、まだはっきりとは決まっていない。

そんなある日、動物愛護センターの譲渡会へ行った。

最初は「今日は見るだけ」のつもりだった。

子猫はみんなかわいい。
だからこそ、見た目だけで選ぶことはできなかった。

この先、15年、20年と一緒に暮らすかもしれない。

だったら、私が選びたいのは「一番かわいい子」ではなく、「この子と一緒に暮らしていきたい」と思える子なのかもしれない。

そして、その日の最後に私の膝の上にいたのが、一匹の茶トラの男の子だった。

私はこの子を抱っこしながら、まだ迷っていた。

でも、しばらくして私の髪の毛で遊び始めたとき、ふと、これからの20年が頭に浮かんだ。

「この子と20年、生きていこう。」

そう思った。


「今日は見るだけ」のつもりだった

地方都市へ移住して約1か月。

この日は動物愛護センターの譲渡会へ向かった。

実は、最初から猫を迎えるつもりではなかった。

「今日は話を聞いて、気になる子がいなければ来週また来ればいい。」

そんな気持ちで説明会に参加した。

譲渡会が始まるまでの時間、他の参加者は次々と第一希望を書いていく。

私も「この子かわいいな」と思う子は何匹かいた。

でも、希望が重なることを考えると、なかなか名前を書くことができなかった。


子猫は、みんなかわいい

譲渡会で痛感したことがある。

子猫は、本当にみんなかわいい。

白が多い三毛猫。

優しい色合いのキジトラ。

白が多めのトラ柄の子。

どの子も魅力的だった。

だからこそ、「見た目」で選ぶことはできなかった。

これから一緒に暮らすのは20年近くになるかもしれない。

そう考えると、知りたかったのは毛色よりも性格だった。

でも、譲渡会という限られた時間の中で、それを見極めるのは思っていた以上に難しかった。


最後まで残っていた茶トラ

最後まで気になっていたのが、茶トラの男の子だった。

保護センターでは「うに丸」という名前で呼ばれていた。

耳の近くに皮膚糸状菌(真菌)が見つかり、他の猫や人との接触を制限しながら治療を続けていたという。

そのこともあってか、譲渡会では誰も第一希望を書いていなかった。

センターの方から聞いた話では、うにちゃんは兄弟8匹たちと一緒に段ボールに入れられ、保護されたそうだ。

生後間もない命を段ボールに入れて置いていく人がいる一方で、その小さな命を見つけて保護し、治療し、譲渡会の日まで育ててくれた人たちがいる。

人の行動一つで、命の行き先は大きく変わるのだと感じた。

センター長さんと獣医師さんから、検査結果やワクチン、今後の治療について詳しく説明を受けた。

その時間は、「猫を選ぶ」というより、「命を預かる責任」を考える時間だった。


抱っこした瞬間に見えた未来

最後に抱っこさせてもらった。

膝の上でじっと座っている。

暴れない。

逃げようともしない。

しばらくすると、私の髪の毛を前足でちょんちょんと触り始めた。

その何気ない仕草が、とても自然だった。

その瞬間、不思議と、

「この子と20年生きていこう。」

そう思った。

「かわいいから飼いたい」ではなかった。

一緒に暮らす未来が、ふっと想像できた。


車が見えなくなるまで

譲渡の手続きが終わり、うにちゃんを乗せて車を出した。

バックミラーを見ると、

所長さんと獣医師さんが、車が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。

きっと、保護された日から今日まで、うにちゃんを見守ってきた人たちなのだろう。

「幸せになってね。」

そんな言葉を、手を振る姿から感じた。


新しい家族との最初の一日

家に着くと、最初は緊張していた。

それでも少しずつ部屋を探検し、水を飲み、ご飯を食べ、トイレも済ませた。

ケージから出すと、ダダダッと走り回り、紐のおもちゃを夢中で追いかける。

目はキラキラと輝いていた。

遊び疲れると、ケージに戻って、ベッドの上で人間みたいなおじさん座り。

「出して」と少し鳴いても、しばらくすると落ち着いて待っている。

そんな姿を見ながら、この子らしい性格が少しずつ見えてきた。


移住して、一人ではなくなった

ここへ来てから、この1か月はいろいろなものを手放してきた。

仕事。

住み慣れた街。

長年築いてきた生活。

新しい土地で、一人暮らしが始まった。

でも今日、この家にはもう一つの命が加わった。

保護センターでは「うに丸」。

我が家では、「うにちゃん」。

スペイン語の único (発音:ウニコ)は、「唯一の」「かけがえのない」という意味がある。

この名前には、その意味も込めた。

移住して、この土地で「暮らしていこう」と思えた日だった。


うにちゃんは、茶トラの体に、額にはきれいなM字模様。

そして、もう一つ変わったチャームポイントがある。

しっぽだ。

短いしっぽが途中でくいっと曲がった、いわゆる「鍵尾(かぎしっぽ)」なのだけれど、よく見ると先端が二つに分かれているように見える。

まるで小さなフォークみたいな、ちょっと不思議なしっぽ。

「幸せを引っかけて逃さない」とも言われる鍵しっぽ。

段ボールに入れられて保護された小さな茶トラが、今は私の家で、二つに分かれた小さなしっぽを揺らして走り回っている。

なんだか、このしっぽがこれからたくさんの幸せを引っかけてきてくれそうな気がしている。


Versión en Español


移住の選択と思考シリーズ|全話はこちら
環境を変えたいのか、それとも人生を変えたいのか。


移住して、暮らしが変わった。その先で

こうして私は、移住先で小さな家族を迎えることになった。

仕事を辞め、住む場所を変え、そして今度は一緒に暮らす存在まで変わった。

振り返ってみると、この数か月は、私の人生の中でもかなり大きな転換期だったのだと思う。

でも、環境が変わったことで、変わったのは暮らしだけではなかった。

「これから、私はどう働きたいんだろう」

「これから、どんなふうに暮らしたいんだろう」

「今まで身につけてきたものを、この先どう活かしていけばいいんだろう」

そんなことまで、少しずつ考えるようになった。

移住という選択は、私にとって「住む場所を変えること」で終わらなかった。

むしろ、そこから自分の人生そのものを考え直すことが始まったのかもしれない。

次回からは、そんな40代半ばの私が、これからの人生をどう組み替えていこうとしているのかを書いていきたいと思う。


「人生を組み替える」シリーズ|全話はこちら

仕事、暮らし、学び方――40代、これからの人生を自分で選び直していく。



記事の最後から小さな応援を送っていただけると嬉しいです。

このブログを静かに続ける力になります。

※本記事の内容・概念の無断転載・再配布はご遠慮ください。
引用の際は、出典リンクの明記をお願いいたします。

コメント

Copied title and URL