15分の差で価格が4倍になる鉄道のカラクリと、車内の「見えない階層」
空港特急800円、普通列車200円──わずか15分の差に隠された違い
ジョグジャカルタの空港から市内へ向かう際、国営鉄道(KAI)が運営するエクスプレス(空港特急)に乗った。料金は1人約800円、所要時間は約40分。一方で、各駅停車のレギュラー列車なら約200円、所要時間は約55分。
目的地に着く時間は、たった15分しか変わらない。なのに、価格は4倍も違う。この極端な価格設定に、インドネシアという国の社会構造がそのまま縮図として現れている。
200円の列車は「生活の足」、800円の列車は「時間を買う人」のためのもの
200円の各駅停車には、政府の補助金(PSO)が大量に投入されている。空港で働く清掃員や地元の一般庶民が、生活の足として使えるようにするためだ。
もしこれが800円なら、月収5万円の彼らは通勤だけで破産してしまう。
一方で、800円のエクスプレスには補助金がない。ターゲットは「15分を金で買える」外国人観光客や、海外留学帰りのような現地の一流エリート層だ。
鉄道会社は、持てる者からは適正価格を回収し、持たざる者には補助金によって低価格で提供する。そこには、所得差を前提に設計された社会インフラの姿がある。
70円の通勤電車で見えた「普通のインドネシア」
その後、ジョグジャカルタからプランバナンへ移動する通勤電車(KRL)に乗った。
運賃はわずか約70円。車内はエアコンが効き、誰もがスマホを眺め、一見すると日本の電車と変わらない綺麗さだった。
近代化した車内、その外側に残る巨大な格差
しかし、ここにいるのは日常を生きる「月収3万〜5万円の一般労働者層」だ。
インドネシアのインフラは劇的に近代化され、スマホも普及した。そのため、都市部の光景だけを見ると、日本とそれほど変わらないように感じる瞬間もある。
だが、彼らが暮らす世界と、私たち外国人旅行者が夜に向かう1泊1万円のホテルの世界との間には、決して交わることのない深い溝が横たわっている。
私が本当に考えさせられたのは「物価の安さ」や「経済格差」だけではなかった。
現地で出会ったドライバーやホテルスタッフたちは、私たちを単なる外国人観光客として見ていたわけではない。
母と娘で海外を旅する私たちの姿は、彼らの価値観の中では、また別の意味を持って映っていた。
月収5万円ほどで暮らす彼らの目に、私たちは一体どのように見えていたのか。
次の記事では、バックミラー越しに向けられた彼らの笑顔から、インドネシアで感じたもう一つの「豊かさ」について書いてみたい。
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