一人職場で孤独だった保健師のリアル|誰にも相談できない働き方の正体

看護師・保健師のキャリア

看護師・保健師のキャリア再設計シリーズ 第9回です。

あの頃、私は職場でひとりだった

あの頃の私へ。

あなたは、ずっと一人で抱えていた。
誰にも相談できなくて、何が正解かもわからなくて、
それでも毎日「これでいいのか」と自分に問い続けていた。

今振り返ると、あの頃の私は
“仕事”よりも“孤独”と戦っていたんだと思う。


なぜ一人職場になったのか

私がいたのは、企業の中の健康管理部門。
従業員数は多いのに、保健師は実質ひとり。

法律上は産業医が主体とされている領域で、
保健師の配置は「必須ではない」ことも多い。

だからこそ、組織としての位置づけは曖昧で、
役割も期待も会社によってバラバラだった。

周囲に同じ職種はいない。
相談できる人もいない。

それが「普通」とされている環境だった。


配属先によって、仕事の“意味”はここまで変わる

同じ「産業保健師」という仕事でも、
職場によって、見える景色はまったく違った。

ある職場では、
現場を巡回しながら、一人ひとりの声を直接聞く働き方だった。

定期的に足を運び、顔を合わせて、
その場で相談に乗る。

シンプルだけど、
“ちゃんと役に立っている”と実感できる環境だった。

現場の人たちも、良い意味でシンプルで、
駆け引きや遠回しなコミュニケーションは少なかった。


一方で、別の職場ではまったく違った。

業務は整っていて、ルールも明確。
大きな問題も起きにくい。

その分、対応するケースは限られていて、
しかも難易度が高いものが中心になる。

関わるほどに時間がかかるのに、
状況が大きく変わらない。

そんなケースを繰り返し対応する中で、
「支援とは何か」を考えさせられる場面も多かった。


さらに別の環境では、
仕事そのものよりも、別のものにエネルギーを使う必要があった。

誰がどう見ているか。
どう動くと波風が立たないか。

本来向き合うべき対象ではなく、
組織の空気や力関係に気を配る時間が増えていく。

同じ仕事をしているはずなのに、
使う神経がまったく違う。


「どこで働くか」で、負荷の種類が変わる

振り返って思うのは、
仕事の大変さは“量”だけでは決まらないということ。

  • 現場に出て人と向き合う負荷
  • 難しいケースに関わり続ける負荷
  • 組織の空気を読み続ける負荷

どれも、種類が違うだけで、確かに消耗する。

そして一人職場の場合、
その負荷を調整する仕組みがほとんどない。

だからこそ、
「何がしんどいのか」に自分で気づくことが、とても重要になる。


自分に合う環境は、あとからわかる

当時はただ必死で、
どの環境が良いのかなんて、正直よくわからなかった。

でも今ならわかる。

私は、
“人と直接関わることにエネルギーを使う環境”の方が合っていた。

逆に、
“組織の調整や空気を読むことが中心になる環境”では、
じわじわと消耗していった。

これは、能力の問題ではなく、
相性の問題だと思っている。


誰にも相談できなかった日々

一番きつかったのは、
すべての判断を自分で背負うことだった。

これでいいのか分からない。
でも、誰にも聞けない。

間違えたらどうしよう。
でも、決めるのは自分しかいない。

そしてもうひとつは、
「相談すること=迷惑」と感じてしまう空気。

同じ職種がいないからこそ、
説明コストが高く、理解もされにくい。

気づけば私は、
「この会社に私って必要?」と感じるようになっていた。

看護師時代のようなチームもなければ、
行政保健師のように業務が明確に決まっているわけでもない。

企業保健師は、
裁量があるようでいて、実はとても不安定な立場だった。


それでも辞めなかった理由

それでも続けていたのは、
やっぱり“人”だったと思う。

メンタル不調で苦しんでいる社員。
誰にも言えずに来る人たち。

その人たちが来る場所を、
なくしたくなかった。

あとは単純に、責任感。
ここで投げたらダメだと思っていた。

「せめて自分だけは逃げない」

そんな意地みたいなものも、確かにあった。


孤独の中で身についた力

あの環境はしんどかったけど、
無駄だったとは思っていない。

むしろ、かなり鍛えられた。

判断力。
自分で調べて答えを出す力。
外に学びに行く行動力。

そして、
相手に伝わるように説明する力。

観察力や、危機察知能力もそう。

一人だったからこそ、
逃げずに向き合うしかなかった。


限界を感じたあの日

でも、ずっと続けられる働き方ではなかった。

心も体も、少しずつサインを出していた。

「このままここにいていいのか」
「人生の時間、無駄にしてない?」

そう思い始めた頃、
ある社員に言われた一言が残っている。

「こんなところに閉じ込められてたら、自分なら病みますね」

その言葉で、はっとした。

私は“支援する側”のはずなのに、
自分自身の環境は健全じゃなかった。


一人職場の本当の現実

一人職場には、確かにメリットもある。

人間関係のストレスが少ない。
自分のペースで動ける。
裁量がある。

でもその裏には、
リスクもかなり大きい。

判断の孤立。
責任の集中。
組織が責任を曖昧にする構造。

本来は組織で支えるべき役割を、
個人に背負わせすぎてしまう。

それが、一人職場の現実だと思う。


同じ場所で悩むあなたへ

もし今、同じように感じているなら。

それは、あなたの弱さじゃない。

構造の問題です。

一人で抱える設計になっていること自体が、無理がある。

だから、
無理に強くならなくていい。

外に相談していい。
つながっていい。

同じ仕事をしている人は、外にいます。

あなたは、一人じゃない。


あの頃の私へ、そして今のあなたへ

あの頃の私に言うなら、

「ちゃんと苦しかったって、認めていい」

そして今のあなたへ。

ちゃんと悩んでいる時点で、
もう十分に向き合っている。

だから大丈夫。

その経験は、必ずどこかで意味を持つ。

そして、
あなたの働き方は、あなたが選んでいい。

同じ資格でも、どこで働くかで、まるで別の仕事になるのだから。


もしこの記事が
「少し救われた」
「誰にも言えなかった気持ちを言葉にしてくれた」

そう感じていただけたら、
記事の最後から小さな応援を送っていただけると嬉しいです。

このブログを静かに続ける力になります。


※本記事の内容・概念の無断転載・再配布はご遠慮ください。
引用の際は、出典リンクの明記をお願いいたします。

コメント

Copied title and URL