2026年、人生の再選択 ― 世界を歩きながら考えたこと
前回の記事では、ジャワ文化の中心地・ジョグジャカルタについて調べながら、これから向かう街に思いを巡らせていた。
歴史のある街。
学生が集まる街。
インドネシア独立の記憶を残す街。
飛行機に乗る前の私は、そんなことを考えていた。
しかし実際に到着して最初に向き合うことになったのは、歴史でも文化でもなかった。
もっと現実的なものだった。

空港で突然の「カード無効メール」
5月15日。
バリ島からジョグジャカルタへ向かうため、ングラライ空港の国内線ターミナルへ到着した。
今回は、なんとなく「一番安心できそう」という理由で、ガルーダ・インドネシア航空を選んだ。
出発まではまだ時間がある。
空港でゆっくり過ごそうと思っていた。
ところが、その時だった。
booking.comから一通のメールが届いた。
クレジットカードが無効として報告されました
一瞬、意味がわからなかった。
しかも、そのまま放置すると予約が取り消される可能性があるという。
慌ててホテルへメールを送り、電話をかけ、WhatsAppでも連絡する。
出発前の空港で、突然のトラブル対応が始まった。
最終的に予約自体は維持されたものの、本来ついていたはずの朝食特典は反映されていなかった。
海外旅行では、大きなトラブルよりも、こうした小さなシステムの不具合の方がじわじわと精神力を削る。

ジョグジャカルタ到着、最初の洗礼

約1時間のフライトを終え、ジョグジャカルタ空港へ到着した。
飛行機を降りると、すぐにタクシー営業の人たちが声をかけてくる。
もちろん悪意があるわけではない。
ただ、日本人の感覚からすると距離感が近い。
断っても次々に話しかけられる。
到着したばかりの私は、その勢いに少し圧倒された。
なんとか抜け出し、空港鉄道「KA Bandara」の駅を探す。
日本なら案内表示を見ればたどり着ける。
でも海外では、それが本当に正しい方向なのか確信が持てない。
「本当にこの道で合っているのだろうか」
そんな小さな不安が積み重なっていく。

助けてくれたバリ人女性
駅の券売機では、さらに戸惑った。
スタッフはいるものの、英語でのやり取りはあまり通じない。
どうしたものかと困っていると、一人の女性が声をかけてくれた。
彼女はバリ島出身で、メルボルンへの留学経験があるという。
見た目もいつかディスニ―アニメで見た南国の神様に似ていて、妙に親近感を覚える。
私が切符を買えるよう、ゆっくりと英語で説明してくれた。
終点に着くまで何度も気にかけてくれたことが印象に残っている。
旅先では、その国全体の印象よりも、一人の親切な人の記憶が長く残ることがある。
この日もそうだった。
空港鉄道で感じた時間の流れ
目的地はジョグジャカルタ駅(トゥグ駅)。
料金は75,000ルピアだった。
空港駅は驚くほど近代的で清潔だったが、電車の本数は多くない。
私が乗る予定の列車まで、かなり待ち時間があった。
日本なら「1時間以上待つ」と聞くだけで少し落ち着かない。
しかし周囲の人たちは誰も焦っていなかった。
スマートフォンを見たり、家族と話したりしながら、静かに時間を過ごしている。
待つことを前提とした時間の流れ。
そこにも、日本との違いを感じた。

ジョグジャカルタ駅前で感じた不安

約40分後、終点のジョグジャカルタ駅へ到着した。
駅前には人があふれていた。
タクシー。
ベチャ(三輪車)。
客引き。
熱気と人の多さに、一気に疲れが押し寄せる。
ホテルは徒歩圏内だった。
しかし、その時の私はまだSIMカードを購入していなかった。
ネットが使えない。
Googleマップもない。
現在地もわからない。
しかも歩道は平坦ではなく、大きなスーツケースを引いて歩くには想像以上に大変だった。
炎天下の中を歩きながら、次第に不安が強くなっていく。

ネットがないだけで、人は弱くなる
振り返ってみると、一番大きかったのは客引きではない。
言葉の壁でもない。
ネットが使えなかったことだった。
日本では、地図も翻訳も検索もAIも当たり前に使っている。
それらが一度に失われると、人は驚くほど心細くなる。
便利な道具だと思っていた。
でも実際には、安心感そのものを支えていたのだ。
ジョグジャカルタ駅からホテルまでの徒歩8分は、普段なら何でもない距離だ。
それなのに、この日はひどく長く感じられた。
5月のインドネシアは大型連休の真っただ中だった
後になって知ったのだが、この時期のインドネシアは大型連休期間だった。
インドネシアには「Cuti Bersama(チュティ・ブルサマ)」という制度があり、祝日の前後に推奨休日が設定されることがある。
今回もキリスト昇天祭を中心に連休ができ、多くの人が国内旅行に出ていた。
その結果、
- フライト代は高騰
- ホテル代も上昇
- 観光地や交通機関も混雑
していた。
私は何も知らず、その波の中に飛び込んでいたことになる。
旅は、その国の「普通」に触れること
旅というと、有名な観光地や絶景を思い浮かべる。
しかし実際には、その国の人たちがどんな休日を過ごし、どんなふうに移動し、どんな時間感覚で生きているのかを知ることの方が印象に残ることがある。
ジョグジャカルタに着いた日の記憶は、寺院でも遺跡でもない。
不安になったこと。
助けてもらったこと。
そして、自分が思っていた以上に多くのものに頼って生きていたことに気づいたことだった。
旅は、新しい場所を見るだけではない。
自分自身の当たり前を知る機会でもあるのだと思う。
この街について事前に少し調べていた内容は、前回の記事にまとめている。
ジョグジャカルタはジャワ文化の中心であり、学生都市であり、インドネシア独立の歴史とも関わる場所だ。
ジョグジャカルタでの移動は、思っていた以上に混乱と不安に満ちていた。
その翌日、私はボロブドゥール遺跡へ向かうことにした。
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