理想は森の中、現実は街の中?1週間の家探しで見えた「私の移住の最適解」|移住①

移住の選択と思考

移住の選択と思考シリーズ 第1回

「せっかく移住するなら、温泉が湧き、牧場が広がるような自然豊かな場所で、できるだけ安く暮らしたい。」

そんな理想を抱いて始まった、1週間の家探し。
けれど実際に現地を歩き、いくつもの物件を見ていく中で、私の優先順位は少しずつ、でも確実に変わっていきました。

そして最終的に気づいたのは、
「場所」ではなく、「どんな前提で暮らそうとしていたか」が問題だった、ということでした。


移住で「山の格安物件」を選びたくなる理由

最初に見て回ったのは、1000万円を切るような山の中腹や別荘地の物件。

条件はシンプルでした。
・温泉が近い
・自然や牧場が広がっている
・人気のレストランやパン屋さんがある

いわゆる「理想の移住地」です。

下水道や都市ガスが整っていないことは、ある程度覚悟していました。
浄化槽やプロパンガスでも暮らせるだろう、と。

むしろこの時、浄化槽が土の中にどう埋まっているのかを初めて知り、
「こうやって生活は成り立っているのか」と妙に納得したのを覚えています。

けれど、実際に現地に立ってみると、それ以上に強く感じたのは
**「人の気配のなさ」**でした。

夜になると、あたりはほとんど完全な暗闇になります。
音もなく、車も通らず、どこまでも静か。

それは「癒し」ではなく、どちらかというと「無音」に近い感覚で、
都会での生活が長かった私にとっては、安らぎというよりも
「孤独との距離が一気に縮まる感覚」でした。

静けさと孤独は、似ているようで全く違う。

このままここで暮らしたら、私はこの環境に馴染めるのか。
そう考えたとき、少し怖くなったのを覚えています。


市街地の物件を見てわかったメリット|感じた安心感の正体

一度立ち止まり、エリアを市街地に絞って物件を見直すことにしました。

そこで感じたのは、想像以上の「安心感」でした。

・上下水道や都市ガスが整っている
・スーパーやジムが徒歩圏内にある
・夜でも明かりがあり、人の気配がある

一つひとつは当たり前のことなのに、
それらが揃っていることで「生活が途切れない感覚」がありました。

私にとっての安心とは、
「便利さ」そのものではなく、
“誰かが近くにいる環境”そのものだったのだと気づいた瞬間でした。


「民泊をやれば寂しくない」という発想

それでも、どこかで自然の中で暮らすことへの未練はありました。

もし山の物件を選んだとしても、
犬や猫と暮らしながら、さらに民泊(Airbnb)をやれば、
人が来る生活ができて寂しさは解消できるのではないか。

そんなふうに考えていました。

そして市街地の物件を見ていく中でも、
「二世帯住宅の片方を民泊にできたらいいかもしれない」
というアイデアは、かなり現実的に感じていました。


しかし現実は、そんなに単純ではなかった

検討していたある物件は、袋小路の突き当たりにあり、
接道の幅は車がやっと通れるほどの狭さでした。
高級車であれば通行をためらうかもしれない——そんな道幅です。

一見すると大きな問題はなさそうに見えますが、用途が「宿泊」に関わると、状況は少し変わってきます。

消防や自治体の基準、建物の設備条件など、クリアすべき要素が増えることを知りました。

「人が来る仕組みを作れば寂しくない」
そう思っていた前提が、少し揺らいだ瞬間でした。


実際に行政に確認してみた

そこで、ネットの情報だけで判断するのではなく、
実際に消防と県の担当部署に問い合わせをしてみました。

すると、返ってきたのは意外な答えでした。

「条件を満たせば、承諾される可能性はある」

つまり、袋小路で接道が狭い物件でも、
必ずしも民泊が不可能というわけではない、ということです。

この回答によって、
一度は難しいと感じた物件の見え方が、少し変わりました。


ただし、「できる」と「できそう」は違う

ここで強く感じたのは、

「できるかもしれない」と「確実にできる」は全く別物だということ。

今回の回答はあくまで口頭での見解であり、
最終的には正式な手続きや書類、現地確認などを経て判断されます。

つまり、

・制度的には可能性がある
・でも確定ではない
・実現には条件クリアが必要

という、いわば“グレーな現実”でした。


移住の家選びで後悔しないために大切なこと

今回の家探しを通して感じたのは、

移住とは
「理想の場所を探すこと」ではなく、
**「自分が無理なく暮らし続けられる条件を見極めること」**だということでした。

自然の中で暮らしたいという願い。
でも、孤独に耐えられるかという現実。

人がいる安心感。
でも、自然が遠く感じられたり、制度や条件といった見えない制約もある。

その両方のあいだを行き来した末に、
今の私は、市街地を中心に家探しを続けています。

背伸びをしないこと。
そして、「なんとなく怖い」という感覚を無視しないこと。

それに加えて、不動産をやっている親族から言われた言葉も、強く残っています。
**「車が入りにくい土地は、それだけで選ばれにくくなる。いざ手放すときの選択肢も限られる」**という話でした。

住むときだけでなく、手放すときのことまで含めて考えること。
それもまた、これからの生活を守るために欠かせない視点なのだと感じています。

それが、自分の暮らしを守るための、
いちばん確かな指針なのだと思いました。
思っている以上に大事なのだと気づきました。


結論|移住は「理想の場所」ではなく「続けられる場所」を選ぶ

もしこれから移住を考えているなら、
少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。

あなたにとっての「静けさ」は、安心ですか?
それとも、孤独に近いものですか?

そして、
「できると思っていること」は、本当に実現可能でしょうか?

移住はゴールではなく、その先の生活のスタートです。
だからこそ、自分が壊れない選択をすることが、何より大切だと感じています。


物件探しは、思っていたよりも「場所」だけの問題ではありませんでした。
むしろ、自分が何を持ち、何を手放せていないのかを突きつけられる時間だった気がします。

そして数日後、東京に戻った私は、ある“手放し”を目の当たりにすることになります。

正直、少し怖かった。でも結果は、想像とはまったく違いました。

▶︎ 次の記事:
「別れの翌日、部屋が空になって気づいたこと」


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生まれた土地の空気と、穏やかな記憶が重なるとき、
人は直接影響を受けている自覚がなくても、
どこかで静かに変わっていくことがある。

私は、ひとつの選択をしました。それが正解かどうかは、まだ分かりません。
ただ、あのとき確かに、もう同じ場所には戻れないと感じていました。

その選択に至るまでの、とても個人的で静かな過程を描いていきます。


移住の選択と思考シリーズ|全話はこちら
環境を変えたいのか、それとも人生を変えたいのか。


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