「最初は入ってほしくなかった」と言う人の心理|25年前の言葉が残る理由|共感と距離⑥

共感と距離の間

「共感と距離のあいだ」シリーズ 第6回

この記事は「共感と距離シリーズ」です。
人間関係の中で起きる共感と境界の問題について書いています。

はじめに

大学に入学したばかりの頃、
多くの人が最初にすることがある。

友達グループを作ること。

教室、サークル、オリエンテーション、飲み会。
数週間のうちに、なんとなく「まとまり」ができていく。

しかし、すべての人がその流れに自然に乗れるわけではない。

私もその一人だった。

一年生の春。
周囲が次々とグループを作る中、私はどこにもしっくりこなかった。

話せないわけではない。
嫌われているわけでもない。

ただ、どこにも「自然に入れる感じ」がしない。

そんな時間が1か月ほど続いた。

ようやく仲良くなれたのは、
一年生の交流会のような集まりだった。

たまたま前に座っていた友人と話し、
その流れで彼女のグループに入れてもらった。

7人の女の子のグループだった。

「ようやく居場所ができた」

そう思ってほっとしたのを覚えている。

しかしその数か月後、
グループの一人がこう言った。

「正直、最初はノアが入るの嫌だったんだよね」

続けてこう言った。

「天然だし」

そして最後にこう付け足した。

「でも今は入ってくれてよかったと思ってる」

そのときは笑って流した。
   

けれど、不思議なことに
その言葉はずっと記憶に残っている。

25年以上経った今でも、
ふと思い出すことがある。

なぜだろう。

グループには「境界」がある

人間関係には、目に見えない境界がある。

心理学ではこれを

グループ境界

と呼ぶ。

特に形成されたばかりのグループでは
この境界はとても敏感になる。

メンバーは無意識にこう感じている。

  • 誰が内側なのか
  • 誰が外側なのか
  • 誰が入ってきてもいいのか

つまりグループは、
小さな「共同体」なのだ。

そこに新しい人が入るとき、
人は少しだけ警戒する。

これは性格が悪いからではない。

人間の自然な防衛反応だ。

それでも普通は言わない

しかし、ここで一つ疑問が残る。

多くの人は思っても
それを言葉にはしない。

ではなぜ言う人がいるのか。

理由はいくつかある。

① 正直さの価値観が強い

「本音を言うのが誠実」

と考えるタイプの人は
遠慮なく言うことがある。

② 社会的フィルターが弱い

思ったことがそのまま口に出る。

③ 力関係の確認

「自分はグループの古参」

という無意識のポジション確認。

言葉が残る理由

ではなぜ、その言葉は長く残るのか。

それは

安心した直後に言われた言葉だから

だと思う。

人は

  • 不安なときの言葉より
  • 安心したときの裏切り

のほうを強く覚える。

ようやく居場所ができたと思ったときに

「最初は嫌だった」

と言われる。

この小さなズレが、
記憶の中に残る。

人は善悪で分けられない

ただ、この話には続きがある。

そのグループは
今でも続いている。

25年以上。

年に一度、
7人全員の誕生日をまとめて祝う会をしている。

つまり

  • 嫌だったと言った人も
  • 言われた私も

関係を手放さなかった。

人間関係は、
単純な善悪では説明できない。

優しい瞬間もあれば
少し刺さる言葉もある。

それでも続く関係がある。

共感と距離のあいだ

人と関わるとき、
私たちはいつも揺れている。

  • 相手を理解したい
  • でも傷つきたくない

そのあいだで。

友情もきっと同じだ。

完全に理解できる人も
完全に安心できる関係も
実はほとんど存在しない。

それでも私たちは

完全ではない人間同士で

長い時間を共有する。

それが、
人間関係なのだと思う。


グループには見えない境界があり、
最初に受け入れられるかどうかで、
後の関係性や居心地が大きく変わることがあります。

次回は、なぜ特定の人だけが攻撃されやすくなるのか
友人グループに潜む『スケープゴート構造』を心理学の視点で解説します。


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「境界線」を疑わずに引く方法|優しい人が疲れない人間関係の作り方
優しいままで、
人間関係に飲み込まれないためのヒントをまとめています。


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**「バウンダリー(心の境界線)」**という考え方をこちらの記事で書いています。


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なぜそんなことが起きるのか。「飼育員と動物園」という比喩で書いた記事です。
飼育員がいなくなった後、動物園では何が起きるのか|感受性|再生⑪


▶「共感と距離のあいだ」シリーズ 全話一覧はこちら


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