第二部|再生編
『感受性の高い人の仕事の見え方』シリーズの第二部 第19回
なぜか、「いい人」でいようとするほど、関係がこじれてしまうことがある。
悪いことはしていないはずなのに、距離を取られたり、なぜか標的にされてしまう。
それは性格の問題ではなく、もしかすると「見えている世界の違い」から起きているのかもしれません。
この「感受性の高い人の仕事の見え方」シリーズでは、
職場の中で、人の感情や空気の変化に気づきやすく、
気づかないうちに多くを引き受けてしまう人の体験を扱っています。
一般的には HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれることもありますが、
本シリーズでは、性質を分類することよりも、
「なぜ、優しい人ほど職場で静かに消耗していくのか」
という構造そのものを見つめていきます。
第一部では、組織の力学や役割が生まれる仕組みを。
この第二部では、
その構造を理解したあとに、
自分をどう取り戻していくのかに焦点を当てていきます。
変えられないものと、
本当は選び直せるものを見分けながら、
「我慢するしかなかった働き方」から
「自分で選び直せる働き方」へ。
「気づかない強さ」が生む防御力
世の中には、相手の不機嫌や悪意にあまり気づかずに、
そのままの温度で人間関係を続けていける人がいます。
そういう人が攻撃の対象になりにくいのは、
人格の問題というより、たぶん**「見えているものの違い」**です。
人の感情の機微をあまり拾わない人は、
相手が隠しておきたい不安や劣等感にも、あまり触れません。
だから、無意識のうちに相手の自尊心を守っていることも多いし、
結果として、衝突が起きにくくなる。
攻撃する側から見ても、反応が薄い相手は手応えがなくて、
わざわざ関わる理由がなくなる、というのもあると思います。
「察する優しさ」が、脅威として受け取られるとき
一方で、感受性が高い人は、
言葉の裏や、ちょっとした空気のズレに気づいてしまうことがあります。
そして多くの場合、
それをそのままにせず、
「触れないようにしよう」
「安心できるようにしておこう」
と、自然に振る舞いを調整している。
でも、この“察していること”自体が、
人によってはプレッシャーになることがあります。
「気づかれているかもしれない」
「見抜かれているのではないか」
そんなふうに受け取られたとき、
その不安を打ち消すように、距離を取られたり、
ときには攻撃的な形で返ってくることもある。
優しさとしてやっていることが、
別の文脈では“脅威”に変わってしまう。
ここに、ひとつのすれ違いがある気がしています。
「よく泣く人」と「感受性が高い人」は同じではない
感受性の話になると、
「感情が表に出やすい人=感受性が高い」と思われがちですが、
実はそこはあまり一致しません。
自分の感情に敏感であることと、
他者の感情に気づけることは、少し違うものです。
自分の中では強く感じていても、
相手の立場や痛みへの想像が追いつかないと、
関係の中で摩擦が生まれてしまうこともある。
悪気があるわけではないのに、
なぜか関係がこじれていく。
そういう場面の背景には、
このズレがあることも少なくないと思います。
「わかりやすさ」が選ばれてしまう場面
組織の中にいると、
すべての人間関係を丁寧に読み解く余裕がない場面も多くなります。
そういうときに選ばれやすいのは、
・多数派の意見
・声の大きい情報
・シンプルに説明できる話
だったりします。
複雑な背景や微妙なニュアンスよりも、
「処理しやすい情報」が優先されてしまう。
これは誰かが意地悪をしているというより、
仕組みとしてそうなりやすい、という側面もあると思います。
ただ、その過程で切り落とされるものも、確かにある。
ここで書いているのは、
誰かを悪者にしたいわけではなくて、
「感じ取り方の違い」が、どうしてすれ違いになるのか、という話です。
自分を守るための関わり方
もし今、理由がはっきりしないまま
人間関係に違和感を感じているなら、
それはあなたの問題というより、
「見えている世界の違い」かもしれません。
少しだけ、関わり方を変えてみると、楽になることもあります。
・すべてを理解し合おうとしない
→ 違いが大きい相手に、それを求めすぎると消耗する
・反応を少しだけ薄くする
→ 相手との距離が安定することがある
・境界線を意識する
→ 相手の感情まで引き受けなくていい
おわりに
どちらが正しいか、という話ではなくて、
ただ、
見えている世界が少し違うだけなのかもしれない。
そう思えたとき、
関係の持ち方が、少し変わることがあります。
では、もう一つの疑問が残ります。
なぜ“個人の問題ではない”と分かっていても、
新しい環境に入るたびに、同じことが起きるのか。
なぜ同じことが環境を変えても繰り返されるのか。
次は、『「適応しようとする人」が、なぜ組織の中で脅威になるのか』という視点から、
この構造を見ていきます。
🌿あわせて読みたい
※ここに至るまでの流れを整理したい方へ
感受性の高さが相手の不安を刺激してしまう心理構造について整理しました。
▶ 次に読む
「優しすぎて、もう疲れてしまった人へ」
→ 優しすぎる人は、なぜこんなに生きづらいのか
→ごまかして生きられないことはなぜこんなに苦しいのか
▶ この苦しさの“正体”を知る
「それはあなたの問題ではないかもしれません」
→ なぜ組織は“見ないふり”をするのか
→組織が変わらないのには理由がある
▶ もう限界かもしれない人へ
「無理に頑張り続けなくてもいいという話」
→ 静かに降りるという選択
→変わらなかった世界と、変わった私
▶【「感受性の高い人の仕事の見え方」シリーズ全話一覧はこちら】
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