※この記事は
第一部|組織と依存の構造
「感受性の高い人の仕事の見え方」シリーズの第4回です。
▶ 第1回|やさしくて仕事のできる人ほど、会社で静かに消耗する
▶ 第2回|感受性の高い人と低い人の働き方の違い ― 過去・現在・未来の視点から考える ―
▶ 第3回|抽象思考の人ほど、職場で消耗していく理由―「翻訳役」になってしまう構造―
▶ 第4回|記憶力がいい人ほど、職場で消耗していく理由―「説明係」になってしまう構造―
▶ 第5回|危険を読む人ほど、前に出られなくなる
▶ 第6回|同じ職場なのに、なぜこんなにしんどいのか
▶ 第7回|なぜ組織は「見ないふり」をするのか
このシリーズでは、
「なぜ、優しい人ほど職場で消耗していくのか」をテーマに、
実体験と心理構造の両面から掘り下げています。
第一部では、組織・人間関係・依存構造の問題を分析し、
第二部では、自分の人生を取り戻すための視点を整理していきます。
読み進めることで、
「我慢するしかなかった自分」から、
「選び直せる自分」へ変わっていくことを目指しています。このシリーズでは、
「感受性が高く、まじめで、仕事に誠実な人」が
なぜ職場で消耗しやすいのかを、構造的に書いています。
「私ばっかり覚えてる」と感じる瞬間が増えていませんか。
説明係としての消耗は、個人の問題ではなく、役割が偏る仕組みから生まれています。
なぜ「説明係」は自然に生まれてしまうのか
「これ、前にも説明しましたよね」
そう言いかけて、飲み込んだことはありませんか。
職場でいつの間にか“説明係”になっている人は、だいたい一番疲れています。
決めたことや背景、注意点を覚えているのは自分で、忘れているのは他人。
それでも仕事は回るため、その負担は表に出にくいままです。
中には、上司が意図的にメモを取らないわけではないのに、話の流れを覚えている人がいることで、いつの間にかその人の記憶に頼る形が出来上がってしまう職場もあります。
聞かれれば、すぐに答えてあげる。思い出して、整理して、吐き出してあげる。
それが自然な役割になっていくのです。
信頼や役割分担のつもりが、気づけば一人の記憶力に負荷が集中している。
それが問題を見えにくくしています。
これは性格の問題ではなく、職場の構造の話です。
記憶力がいい人が疲れるのは「能力差」ではなく、「認知負荷が一方的に偏る構造」に置かれるからです。

「私ばっかり覚えてる」と感じる瞬間
会議の途中で、「あれ、これってどうなってましたっけ?」と聞かれる。
資料にも書いてあるし、前にも説明した。でも、なぜか答える役はいつも自分です。
覚えているから答えられる。
答えられるから聞かれる。
そうやって気づくと、自分だけが経緯を背負っている感覚になります。
その違和感は、気のせいではありません。
なぜ断れず、引き受けてしまうのか
説明係になってしまう人の多くは、責任感が強く、全体を見ようとする人です。
場が止まるのが嫌で、空気が悪くなるのが嫌で、「じゃあ私が」と手を挙げてしまう。
断らないのは、優しさや配慮の結果でもあります。
だからこそ、自分ではそれを「負担」だと認識しにくいのです。

気づかないうちに起きている役割の偏り
上司や周囲が悪意を持っているわけではありません。
ただ、「覚えている人がいるから大丈夫」「あの人がいるから大丈夫」という状態が続くと、役割は固定化します。
記憶する人、説明する人、調整する人。
それらが一人に集まると、仕事量以上に消耗感が増えていきます。
問題は、人ではなくおちいりやすい構造にあるのです。

疲れないために、できる小さな一歩
すべてを変える必要はありません。
まずは「覚えていること」を自分の中に抱え込まないこと。
議事録に残す、チャットに流す、「ここに書いてあります」と示す。
記憶ではなく、仕組みに渡すだけで、負担は少し軽くなります。
説明係を卒業するという選択
説明係ができるということは、能力の証でもあります。
時に深く尊敬されたり頼りにされたりして、自尊心や優越感をくすぐられ、負担を感じているのになぜか続けてしまう。
でも、それを続けることは、自分を削られていく感覚もある。
そんな感覚に気づいたら、もう一人で抱え続ける必要はありません。
覚えている人が能力を搾取されて損をしない形を選ぶことは、わがままではなく健全さです。
説明係を卒業することは、仕事を投げることではなく、役割を正しく戻すこと。
本来、共有されるべき情報を、個人が抱え続けないための選択です。
その選択ができる人ほど、本当はとても誠実な人だと思います。

説明係は、あなたの仕事ですか? ー役割と依存のあいだでー
説明係でいることが、本当に「自分の仕事」なのか。
それとも、いつの間にか引き受けてしまった役割なのか。
その境界線は、人によって違います。
あなたの場合は、どこにありますか。
もしよければ、あなたの職場でのケースを教えてください。

次回は、「気づきすぎる人」「先回りしすぎる人」が抱えやすい疲れについて書く予定です。


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