察しすぎる人は、なぜ報われないのか
そして、どうやってそこから抜けるか
※この記事は
第一部|組織と依存の構造
「感受性の高い人の仕事の見え方」シリーズの第5回です。
▶ 第1回|やさしくて仕事のできる人ほど、会社で静かに消耗する
▶ 第2回|感受性の高い人と低い人の働き方の違い ― 過去・現在・未来の視点から考える ―
▶ 第3回|抽象思考の人ほど、職場で消耗していく理由―「翻訳役」になってしまう構造―
▶ 第4回|記憶力がいい人ほど、職場で消耗していく理由―「説明係」になってしまう構造―
▶ 第5回|危険を読む人ほど、前に出られなくなる
▶ 第6回|同じ職場なのに、なぜこんなにしんどいのか
▶ 第7回|なぜ組織は「見ないふり」をするのか
このシリーズでは、
「なぜ、優しい人ほど職場で消耗していくのか」をテーマに、
実体験と心理構造の両面から掘り下げています。
第一部では、組織・人間関係・依存構造の問題を分析し、
第二部では、自分の人生を取り戻すための視点を整理していきます。
読み進めることで、
「我慢するしかなかった自分」から、
「選び直せる自分」へ変わっていくことを目指しています。このシリーズでは、
「感受性が高く、まじめで、仕事に誠実な人」が
なぜ職場で消耗しやすいのかを、構造的に書いています。

違和感
「なんで、あの人はいつも一歩引いているんだろう」
職場には、そんな人がいます。
会議ではあまり前に出ない。
意見も控えめ。
でも、状況は誰よりも理解している。
トラブルの兆しも、人間関係の歪みも、
組織の空気の変化も、なぜか一番先に気づいている。
私は、長い間、そういう人を「遠慮深い人」「優しい人」だと思っていました。
そして、自分自身もそういうタイプなのだと思っていました。
けれど、あるとき気づいたのです。
察しすぎる人は、優しいから引いているのではない。
危険を読めてしまうから、前に出られないのだと。
職場で、こんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
「ここで正論を言ったら、空気が変わる気がする」
「この話、突っ込めば揉める」
「私が前に出たら、誰かが不機嫌になる」
理由ははっきりしないのに、
なぜか“危険な気配”だけは伝わってくる。
だから、一歩引く。
黙る。
様子を見る。
その選択を、何度も繰り返してきた人も多いはずです。
でも後から思うのです。
「結局、私だけが後ろに下がっていたな」と。

危険を読む人ほど、前に出られなくなる
- 危険察知能力が高い
- 不安検知が早い
- 空気センサー強すぎ
感受性が高い人は、仕事の内容だけを見ていません。
・誰が力を持っているか
・誰が不満を抱えているか
・誰が誰を嫌っているか
・今、何を言うと火がつくか
こうした“空気の地雷”を、無意識に読んでいます。
それは能力です。
組織で生き残るための、生存センサーです。
けれど、その能力が高いほど、
「ここは出ない方がいい」
「今は黙った方が安全」
という判断も増えていきます。
結果として、
いちばん状況が見えている人ほど、
前に出なくなるのです。
あるプロジェクトでの出来事
私は、あるプロジェクトで、実質的な設計と進行をほぼ一人で担っていました。
インターンをスカウトし、業務を分解し、メール文面を整え、スケジュールを引き、裏で全体を回す。
表に出ていたのはインターンでしたが、実際には私の指示で動いていました。

なぜ前に出なかったか
本当は、自分が前に出る選択肢もありました。
でも、できませんでした。
当時の上司は改革派で、ものすごく周りから煙たがられていました。
私は「右腕」と見られており、目立てば攻撃されるリスクが間違えなくあった。
さらに、別の上司からは「前に出るな」という無言の圧力もありました。
空気を読めば読むほど、
「ここで出たら危ない」
と分かってしまったのです。
判断
だから私は、インターンを前に出しました。
自分を守るためでもあり、
場を壊さないためでもありました。
裏で動けば、全体は回る。
結果がすべて、大勢のために成果が出ればそれでいいと、
そう判断したのです。

地雷:分かってくれているはずの人”に消された瞬間
あるとき、一番そばで判断の背景や裏の努力すら知っていたはずの同僚Aに、こう言われました。
「インターンのこと、Bマネージャーがものすごく感謝してたよ」
その一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になりました。
同僚のAさんは、全部そばで見てきた人です。
私がどう根回しをして、
どう設計して、
どうインターンを育てて、
どう自分を前に出さずに支えてきたか。
全部、隣で見ていた人でした。
その人でさえ、
「インターンが頑張った話」を評価したBマネージャーの意見を受け取って、インターンに感謝すべきだと言っている。
私はその瞬間、強い恐怖を感じました。
最後の証人も消えたと思いました。
—— ああ、こうやって、人は簡単に消えるんだ。
努力も、判断も、背景も、
すべてなかったことになる。
前に出なかった人間は、
存在しなかった人間になる。
してきたことも全部透明にされる。
そう思いました。

気づき
でも今なら分かります。
これは、私が悪かったのではありません。
「危険を察知できる人ほど、前に出られなくなる構造」
の中にいただけでした。

察しすぎる人は、なぜ報われないのか
察しすぎる人は、よく考えています。
「私が前に出たら、上司の立場も悪くなる」
「ここで主張したら、敵を作る」
「別の人を立てた方が丸く収まる」
だから、自分は一歩下がる。
その結果、何が起きるか。
・成果が見えない
・名前が残らない
・評価に反映されない
・他人の手柄になる
いわば、“透明人間化”です。
実際には裏で設計し、支え、すべて動かしているのに、
表に出るのは別の人。
それが何度も続くと、
「私は何をしているんだろう」
という虚しさが残ります。

防御としての「後退」
ここで大事なことがあります。
引いたのは、弱さではありません。
わたしの場合もそうでした。
改革派の上司
派閥の空気
「前に出るな」という無言の圧力
その中で前に出れば、攻撃対象になる可能性が高かった。
だから、あえて出なかった。
あえて裏手に回った。
それは、逃げではなく防御です。
感受性の高い人は、
「壊れないための選択」をしてきただけなのです。

核心:どうやって、そこから抜けるか
では、この構造からどう抜け出すのか。
答えは意外とシンプルです。
「評価の場所を、職場の外に持つこと」
会社の中だけで評価を求めると、評価軸がひとつであるため
空気に飲み込まれます。そこだけが主戦場になる。
でも外にもうひとつの軸を作れば、
「ここでは評価されなくてもいい」
という自由な感覚や今を許せる気持ちが生まれます。
すると、不思議と発言してもいいやと前に出られるようになります。
自分が大事にしているものと自分の尊厳と価値観が変わるからです。

まとめ:察しすぎるあなたへ
危険を読む力は、欠点ではありません。
それは、むしろ高い技術です。
・観察力
・知性
・責任感
・共感力
の集合体。
ただ、その力は、組織の中では消耗されやすい。
ここまで読んで「自分の体験したことだ」と感じた人は、
おそらくこれまで私と同じように危険を察知して後ろに下がった人だと思います。
だからこそ、覚えていてほしい。
あなたが引いてきたのは、
負けたからではない。
賢かったからです。
察しすぎる人ほど、
本当は、遠くまで行ける人です。

あなたの体験したことや判断したこと、そしてその結果も、よかったら、わたしに教えてください。


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