※この記事は
第一部|組織と依存の構造
「感受性の高い人の仕事の見え方」シリーズの第7回です。
▶ 第1回|やさしくて仕事のできる人ほど、会社で静かに消耗する
▶ 第2回|感受性の高い人と低い人の働き方の違い ― 過去・現在・未来の視点から考える ―
▶ 第3回|抽象思考の人ほど、職場で消耗していく理由―「翻訳役」になってしまう構造―
▶ 第4回|記憶力がいい人ほど、職場で消耗していく理由―「説明係」になってしまう構造―
▶ 第5回|危険を読む人ほど、前に出られなくなる
▶ 第6回|同じ職場なのに、なぜこんなにしんどいのか
このシリーズでは、
「なぜ、優しい人ほど職場で消耗していくのか」をテーマに、
実体験と心理構造の両面から掘り下げています。
第一部では、組織・人間関係・依存構造の問題を分析し、
第二部では、自分の人生を取り戻すための視点を整理していきます。
読み進めることで、
「我慢するしかなかった自分」から、
「選び直せる自分」へ変わっていくことを目指しています。このシリーズでは、
「感受性が高く、まじめで、仕事に誠実な人」が
なぜ職場で消耗しやすいのかを、構造的に書いています。
嫌なことに蓋をしてしまう人の心理― なぜ問題は放置され続けるのか ―
会議で、
嫌な話題や気まずい空気が流れた瞬間、
すぐに話題を変える人がいます。
一見すると、
彼らはストレスにさらされず、
ラクに働いているように見えるかもしれません。
けれど実は、
その「見ないふり」には、代償があります。
現在にフォーカスしないことは未来に課題を先延ばしにすること。
そう気づく人には、この行動は不思議に映ります。
「なぜ気づいているのに何もしないんだろう」と、違和感を覚え、消耗するのです。
しかし、その人なりの理由や心理構造を理解すると、単なる無関心ではないことが見えてきます。

蓋をする人は「無関心」ではない
嫌なことに蓋をする人は、感情そのものを無視しているわけではありません。
むしろ多くの場合、
「摩擦を避けたい」
「波風を立てたくない」
という気持ちを最優先にしています。
- 問題に立ち向かうと、自分の意見や感情を整理し、説明しなければならない
- 立場や関係性が変わるリスクがある
- 対立を引き受けるリスクがある
- その結果、心理的エネルギーを大きく消費する
だから、
「今は見ないでおこう」
「流しておこう」
が、最も安全に見えるのです。

蓋をするのは「現場」だけではない
問題に蓋をするのは、
現場の人だけではありません。
この傾向は、
役職が上がるほど強くなります。
“決定権を持つ側”の役員や管理職は、
違和感や問題を指摘されたとき、
心の中でたぶんこう思っています。
「お願いだから、今は黙ってほしい」
「自分には解決できない」
「複雑すぎて手が付けられない」
「動いたら責任になる」
つまり、
無視ではなく、恐れです。

上に行くほど「現実が見えなくなる構造」
多くの組織では、
上に行くほど、
耳の痛い情報が届かなくなります。
理由はシンプルです。
✔ 否定すると嫌われる
✔ 波風を立てると評価が下がる
✔ 昇進できないより従った方が安全
だから、
「イエス」と言う人だけが残り、
「ノー」と言える人ほど遠ざけられ離れていく。
結果として、
問題を指摘できる人材が、
組織から消えていきます。
何年も摩擦が生まれず、
その平穏こそが
会社の正しいやり方だと
宗教のように信じ込む人もいます。

日本企業文化がつくる「思考停止」
さらに背景にあるのが、
日本の会社文化です。
✔ 前年の完璧な踏襲を良しとする
✔ 波風を立てないことを良しとする
✔ 和を乱さないことを良しとする
これらが圧倒的な「正しさ」と考える集団になります。
長年この中で生きてきた人ほど、
考えないことが生存戦略になります。
気づかないのではなく、生存戦略的に
「考えないほうが安全」なのです。
一見、「無関心」「鈍感」と見えても、
長年の文化的慣習や生存戦略を踏襲した結果なのです。

「能力不足」は、個人ではなく構造の問題
本当は、
すべての役員や管理職が
無能なわけではありません。
でも、
✔ 問題を扱う訓練を受けていない
✔ 複雑な構造を整理できない
✔ 利害調整の経験がない
まま、
役職だけが上がっていくことは、
よくあります。
そうなると、
「見えているけど、動けない」
状態になります。
これは、
個人の弱さではなく、
育成するという視点を持たなかった組織の責任です。

蓋をする人の代償は「思考の自由」
問題を直すには、
✔ 対立が必要
✔ 調整が必要
✔ 責任を負う必要がある
それよりも、
「触れない」
「先送りする」
「曖昧にする」
ほうが、楽です。
だから、
問題に蓋をすることが選ばれます。
蓋をする人は、
一見ラクに見えます。
でも実際には、
過去を振り返らず
未来を深く考えず
今の半径1m程度の平穏の世界だけを優先して見る
そんな生き方になります。
その結果、
思考の自由度を失います。
選択肢は狭くなり、
変化に極端に弱くなります。

感受性が高い人は「不都合な存在」になりやすい
構造が歪んでいる組織では、
気づく人は歓迎されません。
なぜなら、
「見えないふり」ができないからです。
あなたの存在は、
無意識にこう受け取られます。
「この人がいると、
現実を見なきゃいけなくなる」
だから距離を取られる。
評価されない。
孤立する。
これは、
あなたの欠点ではありません。

違和感に気づく人は「思考が自由であることを選んでいる」
✔ 小さな違和感に気づく
✔ 構造を考える
✔ 未来を想像する
だから、消耗します。
でも、
思考と選択の自由は残ります。
あなたは、
不自由で不確定な安心より、
不安定で守られないのだけれども自由を選んでいる人です。
それでも、あなたの視点は必要とされている
組織は、
✔ 見ない人
✔ 従う人
✔ 気づく人
で成り立っています。
気づく人がいなくなった組織は、
ゆっくり壊れます。
あなたは、
「異物」ではなく、
「安全装置」です。
ただ、組織自体がそのことに気づくのは
ずいぶん先のことになるかもしれません。

自分を守るための現実的な視点
大切なのは、
組織を救うことではありません。
あなたを守ることです。
✔ 全部背負わない
✔ 説得しすぎない
✔ 距離を持つ
「私はここまででいい」
と線を引くことも、
成熟した判断です。
人によっては諦めと表現するのかもしれません。

まとめ
問題に蓋をする文化は、
現場の弱さではなく、
上層の恐れと能力不足と、
組織構造の結果です。
そこで苦しくなるのは、
現実を見えてしまう人です。
もしあなたが疲れているなら、
それは正常な反応です。
あなたは、
壊れた組織に適応できなかっただけです。
嫌なことに蓋をする人は、一見ラクに見える
でも、思考の自由度という代償を払っている
相手を変えようとせず、違いを理解しながら、
自分の思考と選択の自由を守ること。
それが、感受性の高い人がラクに、
かつ賢く働くためのポイントなのかもしれません。

あなたが感じたその違和感は、本当に「黙るべきもの」だったのでしょうか。
それを感じ取ってしまった自分を、責めすぎてはいませんか。
よかったら、
あなたが飲み込んできた気持ちを、
少しだけ振り返ってみてください。
ここは、
安心して立ち止まっていい場所です。


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